いつの間にか冬になった感じだけど、寒さはこれからが本番ですね。夕方、陽が傾く頃に部屋の中が赤らんできたので、少し外気を吸おうとベランダに出ると、今日も空気が澄みきっていて、見慣れた景色も少しばかり遠くまで見渡せる。夕陽を背負った小さな富士の輪郭が夜に消えかかると、冷たい空気が指先を刺してきて、私に加齢を知らせてくる。余計なお世話だ。体のいろんなところが鈍くなる一方で、脳のどこかで昔の記憶が鋭敏に蘇ってきたりもする。
あの頃こんなふうに冬の夕暮れを見ていたよなと思い返してみても、当時の自分がその瞬間に何を感じていたか、今の私はよく覚えていない。何かを感じていたんだろうけど、まるで言語化してこなかったから覚えていない。そもそも言葉を今以上に知らなすぎたからな。あぁ、もっと本を読んでおけばよかった。そして気持ちを言葉で記しておくべきだった。
若い自分が書いてた言葉が、ふと部屋に戻ったときに読み返せるなら、それはもう、相当に豊かな時間になりますよね。
言葉を残してこなかったのは、人生の後悔のうちのひとつですね。